内井惣七

近頃はやりの考え方によれば、「科学」は社会制度や法律、文化や芸術作品と同じように、人間が社会的営みの中で作り出したものである。したがって、人間の社会的営みがあるところには必ず「倫理」の問題が出てくるので、科学といえども倫理の問題は避けて通れない、ということになる。このような答えは、当然のように見えて、ほとんど内容がない。なぜなら、先の問いの本質的な部分は、「なぜ倫理か」という部分だけではなく、「なぜ科学か」という部分にもあったはずだからである。